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2007年11月13日 (火)

台湾に行ってきた②(故宮博物院)

(承前)

 故宮博物院は周知の通り、世界の四大博物館の一つに数えられている。故宮とは北京の紫禁城を指す。辛亥革命後、清朝は紫禁城に限定して存続を許されたが、軍閥の抗争が相次ぐ中、1924年に馮玉祥が北京に入城、ラストエンペラーこと宣統帝は追放された。翌1925年、清朝宮廷の所蔵品は公共の管理下に移され、一般公開されることとなったのが故宮博物院の始まりである。

 さらに続く軍閥同士の抗争、そして日本軍の侵略と戦火が絶え間ない中、コレクションは上海、南京、四川省の山奥、重慶などと場所を転々とし、最終的には国共内戦で敗れた蒋介石と共に台湾に移転された。当初は戦火が台湾にも及んだ場合に備えて台湾中部の山奥、洞穴状の倉庫に置かれたが、1965年、台北市北郊の士林に新館が完成、こちらに落ち着いて現在に至る。なお、蒋介石が故宮博物院にこだわったのは、その所有が中華民国の正統性を示すと考えていたからである。

 写真1写真2写真3は故宮博物院。同行したHは「何だか新しくなったような気がする」と言う。2005年に故宮博物院創設80周年を迎えたのを機にリニューアルされたらしい。所蔵品は膨大な数にのぼり、常に展示の入れ替えを繰り返している。ミュージアム・ショップで購入した国立故宮博物院編・温井禎祥訳『故宮七十星霜』(台北:国立故宮博物院、1996年)を読むと、この建物がたびたび増築されてきた様子がうかがえるが、それでも間に合わず、現在、南部分院も建設中である。単にスペースを広げているだけでなく、内装は近代的に洗練されていて見やすい。所蔵品は当然のこと、博物館の機能としてのクオリティーも極めて高い。

 今回は時間が間に合わず見られなかったが、別館ではウィーン国立美術史美術館の特集展もやっていた。『故宮文物』295号(2007年10月、台北)をやはりミュージアム・ショップで買った。月刊の博物館報だが、全ページカラーで学術誌としてはきれいなつくりだ。現在行なわれている展示の解説が掲載されている。中国語は苦手だがパラパラめくっていたら、表紙を飾るハプスブルク家王女の肖像画をはじめ、ルドルフ2世、甲冑を身にまとった男性像など、見覚えのある絵が結構ある。5.6年くらい前だったか、東京藝術大学付属美術館でウィーン国立美術史美術館の展覧会を見たのを思い出した。故宮博物院は単に中国古来の文物を保存・展示するだけでなく、総合的な博物館・美術館として様々な企画展示を試みていることを改めて知った。

 本館での特集展示は「新視界──朗世寧與清宮的西洋風」。明末清初にかけてイエズス会の宣教師たちが東アジアに来訪した。布教のため西欧の最新技術を紹介、清の皇帝貴顕は彼らを篤く遇する。とりわけ朗世寧(カスティリョーネ)は康熙・雍正・乾隆の三代にわたって仕え、雍正帝がキリスト教の布教を禁じた後も清に留まった。朗世寧は画家として知られ、遠近法などの絵画技術を伝えたほか、円明園(後にアロー戦争で炎上)を設計した建築家でもあった。清代の絵画や陶磁器のデザインを見ていると、大枠としては中国風なのだが、時に精密なリアリスティックな描写がはめこまれていて目を引くことがある。それは朗世寧たち宣教師のもたらした影響である。

 李澤藩という画家の生誕百周年を記念した展覧会も行なわれていた。初めて知る名前だが、どこかボヤッとした感じのタッチの風景画にしっとりとした余韻があってなかなか良い。経歴を示したパネルを見ると、日本統治時代に生まれ、日本に渡って絵画を学び、二科展にも入選したという。帰国してからネットで検索してみたら、どうやら台湾人として初めてノーベル賞を受賞した化学者・李遠哲の父親らしい。李遠哲は李登輝政権下で中央研究院長を務め、その後、陳水扁政権のアドバイザーとなったことでも知られている。

 本館をぶらぶら歩くだけでも中国の歴史を古代から近代まで通観することができる。時間がそれほど潤沢にあるわけではないのでやや駆け足でまわった。昔、世界史の受験指導をしていたことがあり、中国史の記憶を掘り起こしながら、同行のHに押し付けがましく解説する。私のはしゃぎぶりに辟易したのか、やや迷惑そうだった。申し訳ない。

 ミュージアム・ショップでは、前掲の2冊の他、故宮博物院の展示品からいくつか代表的なものを時代順に並べた解説カタログ『天工宝物──八千年の歴史を物語る長河』『妙華生花──故宮所蔵の書画と文献資料』(共に台北:国立故宮博物院、2007年)も購入した。前者は器物、後者は書と絵画を集めており、日本語版があった。少々大きくてかさばるが、説明は簡潔で読みやすい。

 別館として図書館もある。写真4はその入口前に立つ蒋介石の銅像。すでに閉館時間。近くの原住民博物館にも寄りたかったが、今回はパス。タクシーでMRT士林駅へと向かう。

(続く)

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