「転々」
「転々」
文哉(オダギリ・ジョー)は大学生、身寄りが全くなく孤独な生活を送っている。そこに現われた借金取りの福原(三浦友和)から「俺と一緒に東京散歩に付き合ってくれたら100万円やる」と言われ、半信半疑ながらもついて行く。吉祥寺出発、目的地は霞ヶ関。しかし、何のため? 「女房を殺した。警視庁に自首するから、その前に思い出の場所を歩きたいんだ。」
東京にうごめく不可思議な人々とすれ違う。途中、福原は拳法が滅法強い時計屋のじいさんから一撃くらい、知り合いのマキコ(小泉今日子)の家に転がり込んだ。マキコの親戚、ふふみ(吉高由里子)も乱入し、四人で過ごす擬似家族体験。そして、二人は桜田門へと歩いていく。
「ALWAYS 三丁目の夕日」を観た時にも思ったことだが、東京というのは雑居性を特徴とする都市のせいか、“擬似家族”というテーマになじみやすい。人間はたくさんいるのだが、その中で砂粒のように散りばめられた孤独な人々をすくい取る横のつながりが時代は変わっても常に求められているからだろう。
東京の古い街並を次々とつぶしていくコインパーキングを見て、文哉は自分の過去もこうやって消し去りたいとつぶやく。しかし、そんな彼でも、たった数日間の擬似家族体験を通して表情が活き活きとしてくるあたりは観ていてホッとする。
私自身、よく東京散歩に出かけるので、その点でもこの映画には愛着を感じた。うかつにも監督の三木聡という名前をつい最近まで知らなかったのだが、「時効警察」は時々観ていた。麻生久美子とオダギリ・ジョーは二人とも好きな俳優だし、ナンセンス・ギャグ的な演出も私のツボにはまっていた。この「転々」も大筋からいえば決して軽いストーリーではないが、深刻になりかねないところを良い意味ではぐらかしてくれて、気持ちよく観られる。チョイ役で色々な人が登場するが、岸部一徳の使い方には笑った。
【データ】
監督・脚本:三木聡
原作:藤田宜永(新潮文庫、2005年)
2007年/101分
(2007年11月25日、テアトル新宿にて)
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コメント
本当に愛着の湧く作品になりました。
東京の一部しか知らないけど 巡ってみたいとも思ったし
コネタ満載で(呪い祭りとかww)かなり楽しめました
いやあ一徳さん かなりおいしかったですわあ
投稿: HAR | 2007年11月27日 (火) 02時24分
HARさん、はじめまして。コメントをありがとうございました。
粗筋だけでいうと結構マジメですが、小ネタが効いててなかなか良い感じですよね。
投稿: トゥルバドゥール | 2007年11月27日 (火) 19時58分