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2007年11月28日 (水)

「花蓮の夏」

「花蓮の夏」

 海辺に三人の男女がたたずむシーンから物語は始まる。服は砂に汚れ、顔にはスリ傷が見える。台湾東岸、花蓮の街。じっとりと汗ばむ夏の陽気の中でも、青々と広がる田んぼや山の木々、海辺に打ち寄せる波音に清涼感があって、暑苦しいという感じはしない。主人公ジェンシンの家は日本式家屋、古い街並の残る田舎町であることがうかがえる。後半、映画の舞台は台北に移るが、密集度が高くて不快指数も高そうな都市空間との対照が際立つ。

 ジェンシン(ブライアン・チャン)とショウヘン(ジョセフ・チャン)は小学生の頃からの親友。優等生のジェンシンが、挙動が落ち着かず嫌われ者のショウヘンと友達になるよう先生から言われたのがきっかけだった。大学受験を控えた時期、ジェンシンはホイジャ(ケイト・ヤン)と付き合っていたが、ホテルに行っても何もできず、自身の同性愛的傾向に気付く。ショウヘンとホイジャは台北の大学に進んで付き合い始めたが、ジェンシンは受験に失敗、鬱屈したものを抱えながら予備校に通う。彼のショウヘンへの想い、恋愛と友情とが重なり合った三角関係。三人の気持ちはそれぞれに無垢であるだけに、否応なく傷つけ合わざるを得ないことに戸惑う。

 全体的に映像のトーンは青っぽい感じで、それが三人の気持ちを痛々しいまでに叙情的に浮き上がらせている。季節は夏。同性愛というテーマからしても暑苦しいストーリーではあるが、観終わってから後味の悪さは全くない。

 以前、ツァイ・ミンリャン監督「青春神話」(1992年)を観たときにも感じたことだが、受験競争の厳しい管理教育社会という台湾の一側面が垣間見えるのも興味深い。

【データ】
原題:盛夏光年 ETERNAL  SUMMER
監督:レスト・チェン
台湾/2006年/95分
(2007年11月25日、渋谷、ユーロスペースにて)

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