「ALWAYS 続・三丁目の夕日」
「ALWAYS 続・三丁目の夕日」
東京タワーが完成し、高度経済成長で東京の姿も徐々に変わりつつある頃が舞台。夕焼け空があたたかく感じられるのは幸せな時代なのだと思う。いや、“幸せ”なんて表現で片付けてしまうのは適切ではないのかもしれない。この映画ではコミカルなドタバタの中でも、失ったものを引きずる姿が随所に見え隠れするのだから。
一つは、戦争の影。鈴木オートのオヤジ(堤真一)は戦友の幻を見る。医師のタクマ先生(三浦友和)は、前作ではタヌキに化かされて空襲で亡くした家族の夢を見たが、今回はそのタヌキを焼き鳥でもう一度おびき出そうとしている。
もう一つは、故郷喪失感。集団就職で上京したロクちゃん(堀北真希)のことは前作ではストーリーの柱となっていたが、今回は一緒に上京したタケオが方言訛りの言葉を笑われてぐれてしまうというエピソードがある。ヒロミ(小雪)は身売りされてストリッパーになった。淳之介とミカの二人にしてもそれぞれに親の事情のため、よその家で寄寓生活を送らざるを得なくなった。そうした人々が集まり、鈴木オートの夫婦(堤真一・薬師丸ひろこ)と駄菓子屋の茶川さん(吉岡秀隆)、それぞれの家でいとなまれる擬似家族的なつながりがこの映画の中心をなしている。
失ったものがあるから、それを取り返そうと前向きに努力する。故郷や親元を離れ、仕事や生活上の問題ばかりでなく精神的にも孤独感に苛まれかねないところ、擬似家族的な共同体の中に生きていく拠り所を見つける。それぞれに自分の抱えているものと向き合うのに必死だった。同時に、それぞれの背負った傷を互いに埋め合おうとする本能的な智慧を忘れていなかったからこそ、こうした擬似家族がおのずと形成されたとも言える。
山崎貴の映画は「ジュヴナイル」(2000年)、「リターナー」(2002年)ともに映像効果がたくみで、子供向けSFだからと斬っては捨てられないほどに面白かった。特に「ジュヴナイル」は小学生の頃の夏休みを思い起こさせるようなノスタルジックな空気が漂い、その雰囲気は「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズにもつながっている。やはり見所はVFXで再現された昭和30年代の東京の風景だ。私自身もはや見たこともない街並ではあるが、普段歩き慣れた東京のかつてのたたずまいに少々の感慨もわく。
【データ】
監督・VFX:山崎貴
脚本:山崎貴・古沢良太
2007年/146分
(2007年11月23日、新宿バルト9にて)
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