「包帯クラブ」
“心”の傷に包帯を巻きます。そんな活動を始めた高校生たちの、見えそうで見えない心の機微を描き出した物語。原作は天童荒太(ちくまプリマーブックス、2006年)。大ベストセラーとなった『永遠の仔』(幻冬舎文庫)にしてもそうだが、ストーリー立てがうまいというだけでなく、人の“心”の問題に分け入るテーマ設定は感情移入がしやすいのだろう。ただし、何でもかんでもトラウマの問題にしてしまうのは、私などには少々違和感があるのだが。
堤幸彦というと「TRICK」や「ケイゾク」の印象が強い。実験的なカメラワークで映像作りにとにかく凝っており、ナンセンスなシーンを随所に挿入して笑わせるあたりもおもしろかった。しかし、今回は割合とおとなしめな作り方。こういう叙情的な映像も作れるというのはちょっと驚いた。出だしのモノローグなどなかなか好きだ。
原作では関東近県の架空の街となっているが、映画では高崎が舞台。以前、用事があって一度だけ行ったことがある。この映画と同様、からっ風が吹く寒い季節だった。少年少女の孤独な気持ちと、このどこか透明感すら漂う乾いた寒さとが私のイメージとして不思議に結びついて、観終わった後の印象は悪くない。
【データ】
監督:堤幸彦
出演:柳楽優弥、石原さとみ、貫地谷しほり、原田美枝子、他
2007年/118分
(2007年9月30日、新宿オスカーにて)
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