「冬冬の夏休み」
「冬冬の夏休み」
冬冬(トントン)はもうすぐ中学生。お母さんは病気で入院しており、休みの間、妹の婷婷(ティンティン)と一緒に田舎のおじいさんのもとで暮らすことになった。引率してくれたちょっと頼りない叔父さんがはぐれてしまうというハプニングから始まったものの、駅前で出会った少年たちと意気投合、楽しい夏休みの予感。
豊かな緑が広がる中、茶目っ気たっぷりな少年たちと素っ裸になって水浴び。台北に暮らす冬冬にとって田舎暮らしの一つ一つが新鮮なようだ。その一方で、大人の世界も少しずつ垣間見えてくる。知恵遅れの女性の妊娠。あの頼りなかった叔父さんの自立。「親ができるのは、子供が一人立ちできるための準備くらいだよ」──頑固で恐かったおじいさんのしみじみとした述懐を冬冬はかたわらで聞く。
二十年以上前の作品なので映像は少々粗いが、田んぼが広がり、木々が青々と茂る夏の田園風景はのどかに美しい。紙貼りの障子、畳の部屋で寝転んだり、ちゃぶ台に向かって勉強したりしているシーンが映り、この頃の台湾にはまだ日本風家屋が普通に残っていたのをしのばせる。三、四十年くらい前の日本でもこうした生活光景が見られたのではないか。そんな親近感もわく。
【データ】
原題:冬冬的假期
監督:侯孝賢
脚本:侯孝賢、朱天文
1984年/台湾/98分
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