写真集をネタにとりとめなく雑談
昼休み、少し足をのばして銀座コアのブックファーストへ行った。店舗面積はそれほど広いわけではないが、美術書のコーナーが見やすく充実しているのでよく立ち寄る。例のごとく、写真集を立ち見。
“傷”をテーマとした写真集2冊が正面に面陳されていた。1冊は、石内都『Innocence』(赤々舎、2007年)。モノクロームで撮影された手術痕、切り傷、ケロイド──。体に刻印された傷そのものに人それぞれの生のありようを見つめていく。以前、竹橋の国立近代美術館だったと思うが、石内の写真展を見た覚えがある。その時以来、この“傷”シリーズは気になっていた。
もう一冊、岡田敦『I am』(赤々舎、2007年)はリストカットした男女の裸体を様々なアングルから写しだす。意外と落ち着いた表情と、内腕に刻まれた無数の切り傷の痛々しさとのギャップが印象にやきつく。女性の局部などもありのままに写っているのだが、芸術的意図があれば倫理規定はクリアできるのか?
今年に入って、大山顕・石井哲『工場萌え』(東京書籍、2007年)をはじめ、産業もの写真集が相次いで刊行されたのが目立った。萌えるかどうかは別として、複雑に配管のめぐらされたメカニックな立ち姿はそれぞれに個性的で、意外と目を引付ける。サルマル・ヒデキ『東京鉄塔』(自由国民社、2007年)も風情があっていい。歩調を合わせたかのように銀林みのる『鉄塔武蔵野線』(ソフトバンク文庫、2007年)が復刊されていた。他にも、萩原雅紀『ダム』(メディアファクトリー、2007年)、佐藤淳一『恋する水門』(ビー・エヌ・エス新社、2007年)など、普段は意識しないだけに、一つのテーマとして打ち出して並べられるととても面白い。
小林伸一郎『最終工場』(マガジンハウス、2007年)は日本の経済発展を支えてきた末に用済みとなった工場の姿を写している。こうした廃墟の風景に私は非常に引付けられる。そういえば、小林も含め何人もの写真家たちが長崎の軍艦島をテーマとした写真集を出しているな。
NHKで夜中に放映している「サラリーマンNEO」を時々見ることがある。脱力的なコメディーで、あまり笑えないのだが、なぜか習慣的に見てしまう。この番組で最近、「サラリーマン体操」という奇妙なパントマイムをやっている。これを踊っているコンドルズというグループの公演シーンを集めた『第2ボタン コンドルズ写真集』(扶桑社、2007年)、およびリーダーを被写体とした野村佐紀子写真集『近藤良平』の2冊を見かけた。なんか妙な人たちだなあと思っていたのだが、意外にすごいダンス・グループだったんですね。
以上、すべて立ち見です。書店の方、申し訳ございませんでした。夕暮れの雲に映えた色合いが好きなので、鷹野晃『東京夕暮れ』(淡交社、2007年)だけ購入しましたので、お許しください。
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