「恋するマドリ」
デザイナー志望の美大生ユイ(新垣結衣)は、二人暮しだった姉の結婚で急遽引越をした。忘れ物を取りに戻ったところ、すでに新しい入居人のアツコ(菊地凛子)が来ている。アツコのデザインした椅子がすっかり気に入ったユイは、自分のかつての住まいをたびたび訪れることになった。さらに、アツコの元カレ・タカシ(松田龍平)とも出会い、ちょっと奇妙な三角関係が始まる。
私は映画を観るとき、ストーリーそのものだけでなく、街並とか部屋の雰囲気とか、その中で人が暮らしているディテールを見るのも楽しみにしている。それはとりわけ、引越したばかりの不安と期待とがないまぜになった戸惑いを描き出した作品で印象深い。たとえば、岩井俊二監督「四月物語」(1998年)など好きな作品だ。もっとも、岩井美学で洗練された映像美は、人の息遣いの生々しさを捨象してしまっているが。
「恋するマドリ」の舞台は北品川や目黒、都心とも下町ともつかぬちょっと微妙な土地柄。しかし、高層ビルを背景とした雑然とした街並は意外と嫌いではない。マンションの煤けた色合い、さり気なく聞こえてくる道路の騒音など、そこに住んでいたらどんな感じがするだろうかと感情移入しやすい。
ストーリー的には少々苦笑ものだが、まあ、許容範囲内としておこうか。ガッキー目当てで観ただけだし。彼女のせりふ回しはそんなにうまくはないが、表情の素直な動きが本当にかわいい。それから、ユイがかつて暮らし、次にアツコの入った古びた平屋はなかなか風情があって、これだけでもポイントは高い。
【データ】
監督:大九明子
出演:新垣結衣、菊池凛子、松田龍平、内海桂子、ピエール瀧、世良公則、他
2007年/113分
(2007年9月14レイトショー、新宿バルト9にて)
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 【映画】「新解釈・三国志」(2020.12.16)
- 【映画】「夕霧花園」(2019.12.24)
- 【映画】「ナチス第三の男」(2019.01.31)
- 【映画】「リバーズ・エッジ」(2018.02.20)
- 【映画】「花咲くころ」(2018.02.15)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント