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2007年9月 1日 (土)

スメタナ「わが祖国」を思い出して

 チェコの文化といったら誰を思い浮かべるだろうか? 思いつくままに並べると、スメタナ、ドヴォルザーク、カレル・チャペック、アルフォンス・ミュシャ、ヤン・シュヴァンクマイエル。チェコ人ではないがカフカの名前もはずせない。

 例によってCDショップの試聴コーナーをふらついていたら、スメタナの連作交響詩「わが祖国」をみかけた。ラファエル・クーベリック指揮によるCDが廉価版で出されていた。“ビロード革命”で共産党政権が崩壊し、亡命先から四十年ぶりに帰国したクーベリックの凱旋ライヴを収録した名盤である。なつかしくて、思わずヘッドホンを耳に当てていた。

 私がチェコという国を最初に意識したのはスメタナの「わが祖国」だった。この中の第二曲「モルダウ」の美しいメロディーはあまりにも有名だが、他は意外と知られていない。全六曲を通して聴いたのは高校生の頃だったと思う。第一曲「ヴィシェフラト」はプラハの城を描いている。ハープで始まるメロディーはゆったりとして居丈高なところがなく、しかし荘厳さを失っていない。なかなか良いと思った。「モルダウ」以外は評価されていないと何かで読んだことがあったのだが、ウソつきやがってと腹立たしかった。

 初めて聴いたときは第五曲「ターボル」と第六曲「ブラニーク」がお気に入りだった。CDのライナーノーツに、フス戦争の闘士が甦ってチェコ民族の独立を勝ち取るというテーマが込められていると書かれていた。曲そのものよりも、民族解放というドラマチックなイメージに私は胸を湧き上がらせていた。

 19世紀、ロマン主義の流れをくむ国民楽派はナショナリズムの音楽的表現でもある。フランス革命およびナポレオン戦争をきっかけとしてヨーロッパ全土にいきわたったナショナリズムは、抑圧されてきた小民族の政治的解放の要求を喚起した。それは同時に、自分たちの伝統を見直そうという文化運動と結びついた。アカデミックには言語学や民俗学が成立し、さらに民族的感情を直截に訴えるものとして文学、美術、そして音楽も時代の風潮の例外ではなかった。そうしたパッションはやはり胸を打つ。たとえば、シベリウスの「フィンランディア」も私の大好きな曲である。

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