「キサラギ」
アイドル・如月ミキが謎の自殺を遂げてから一年目。彼女の追悼という名目で、如月ミキ応援サイトに書き込みをしていた常連の家元(小栗旬)、スネーク(小出恵介)、オダユージ(ユースケ・サンタマリア)、安男(塚地武雅)、イチゴ娘(香川照之)の5人が都内のある一室に集まった。思い出話でもしようと軽いノリだったところ、「彼女は自殺したんじゃない、殺されたんだ」というオダユージの一言をきっかけに、トゲトゲしい空気が部屋にわだかまる。
時間がたまたま合ったので事前情報なしに観たのだが、意外と面白かったので驚いた。5人の会話だけで進む密室劇。それぞれが語る回想を通して如月ミキの死の真相に迫るのだが、徐々に一人ひとりの如月との個人的な関係が明らかとなって、互いに「お前が犯人だ!」と疑心暗鬼をつのらせる。どんでん返しが何回も繰り返され、追及の攻守はクルクルと回転。テンポもはやく、映画というよりも舞台を思わせる。何気なく発せられたセリフの一つ一つが後の展開の伏線となっており、脚本がよく練り込まれていることに感心した。5人の掛け合いも絶妙、所々で観客から爆笑が沸き起こっていた。
ネット上では知り合っていたが初めて顔を合わせるという設定は今では違和感なく受け入れられるが、もう10年くらい前になるか、森田芳光監督「(ハル)」(1996年)では、顔を合わせるまでのプロセスをドラマチックに盛り上げていたのを思い出した。ジジくさい話だが、時代も変わったものだと妙な感懐が沸き起こってしまった。
【データ】
監督:佐藤祐市
脚本:古沢良太
2007年/108分
(2007年8月3日レイトショー、新宿武蔵野館にて)
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