「鴨とアヒルのコインロッカー」
仙台の大学へ進み、不安の入り混じった気持ちで引越し作業をする椎名(濱田岳)。玄関先でダンボール箱を紐でゆわきながらボブ・ディラン「風に吹かれて」を口ずさんでいたら、「ディラン?」と背後から声をかけられた。その男、隣室の“河崎”に誘われて彼の部屋に入るとこう言われる、「一緒に本屋へ広辞苑を奪いに行かないか」
何やら不条理、ナンセンスという感じの出だしだが、これには様々な伏線が張られている。二年前におきた不幸な事件をめぐる、“河崎”、ブータン人のドルジ、その恋人の琴美という三人の物語、そこに椎名は飛び入り参加させられたという形。二年前と現在とが交互に入れ替わりながら話題は進む。伊坂幸太郎の原作小説『鴨とアヒルのコインロッカー』(創元推理文庫、2007年)はいくつもの寓話的エピソードがたくみによりあわされてストーリーテリングのうまさに感心する。
瑛太が色々な役柄を演じ分けているのが目を引いた。最初に登場した時のくだけた色男風、かと思うと物語を唐突に語り始める棒読み口調、日本語のたどたどしいブータン人、空想シーンで一瞬出てきただけだが麻薬の売人となって彫りの深い顔をしかめる表情など板についていて、なかなか良い。
【データ】
監督:中村義洋
原作:伊坂幸太郎
出演:濱田岳、瑛太、関めぐみ、松田龍平、大塚寧々
2006年/110分
(2007年8月8日レイトショー、テアトル銀座にて)
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