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2007年7月 9日 (月)

なつかしい本

 実家が引っ越すことになり、置きっぱなしにしていた荷物を整理しに行った。無味乾燥な典型的な郊外住宅地。正直言ってあまり好きな土地ではなかった。しかし、4歳の頃から20年以上暮らした年月の重みはひしと感ずる。

 それにしてもよくためこんだものだ。私が、ではなく、母が、だが。図工の作品やら、作文やら、テストの答案やら、とにかくざっくり捨てた。小学生の頃、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズが大好きで、その影響を受けてだろうが、冒険小説だか推理小説だかよく分からない代物を書いていたのが結構出てきた。中には原稿用紙100枚以上の大作(?)もあった。すっかり忘れていた。家族から笑われながら捨てた。高校生の頃の日記は笑いごとではない。家族の眼に触れる前にいち早く確保。焼却処分も考えたが、取り合えず保存しておくことにした。色々とあったんでね。

 小さい頃に読んでいた本はやはり捨てがたい。懐かしいばかりでなく、今読んでもなかなか面白いのだ。ポプラ社の江戸川乱歩シリーズはすべて読破した。大半は図書館で読んだが、7冊ほど私の“蔵書”にもあった。大正・昭和初期の風景的イメージは乱歩で最初に形成されたことに改めて気付かされる。ちなみにこのシリーズ、第26巻『二十面相の呪い』までは少年探偵団ものだが、第27巻『黄金仮面』以降はもともと大人向け。時折、エロチックなシーンがあって胸をドキドキさせたのを思い出す。『人間椅子』『芋虫』といった本格的なエロ・グロものを読むのはもっと大きくなってから。

 絵本もなかなか楽しい。『ぐりとぐら』『だるまちゃんとてんぐちゃん』シリーズはいまだに続編が量産されている。スロヴァキア民話をもとにした『十二の月のおくりもの』の絵柄は記憶に鮮明に残っていた。丸木俊の絵筆になるが、今になって振り返ると、全体的に黒っぽいトーンは「原爆の図」と同じだな。ネパール民話『プンク・マインチャ』は絵が恐くて夢にうなされながら、それでも繰り返しページをめくっていたのをよく覚えている。秋野亥左牟という人が描いた絵だ。よほど強烈な印象を感じたようだ。それから、私は全く覚えていなかったのだが、母から聞いたところ、『よかったねネッドくん』という絵本が私の大のお気に入りで毎月一回は必ず図書館から借りていたらしい。これは教文館「ナルニア国」へ行くと今でも平積みしてある。児童書の息の長さには本当に驚く。

 何よりも大好きだったのは『東洋童話集』。創元社「世界少年少女文学全集」のうちの一冊だ。奥付をみると昭和29年の刊行。執筆者として金田一京助(アイヌ学)、松村武雄(神話学)、服部四郎(言語学)、魚返善雄(言語学)など当時の碩学が名前を連ねている。イマジネーションを豊かに刺戟してくれて、今でも読後の余韻を思い出せるほどに印象深い本だ。大叔父から母のもとに渡り、それを私が読んでいた、いわば受けつがれてきた本。ボロボロだが、こういう本こそ捨てられない。

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