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2007年6月 7日 (木)

小林英夫『満州と自民党』

小林英夫『満州と自民党』(新潮新書、2005年)

 タイトルは『満州と自民党』だが、“満州人脈”と“戦後日本経済”と言い換えた方が本書の内容はよく分かるだろう。

 戦前の商工省、企画院(国家総動員体制において資源配分の采配を振るった)、そして旧満州国において統制経済を実施するための様々なプランが立てられていた。その試行錯誤を通して、どこに経済政策立案の重点を置くべきかというノウハウはすでに積み重ねられていた。日本の敗戦後、この人脈は経済安定本部(後の経済企画庁)に流れ込む。指導層クラスも、連合軍による占領という一時的な空白があったにせよ、公職追放解除と共に政治経済の現場に戻ってきた。つまり、1960年代以降にテイクオフした高度経済成長の準備を整えたのは彼らであり、そうした意味で戦前・戦後を通じて一貫した連続性を示すのが本書の骨格となっている。

 とりわけ中心的な役割を果たしたのが岸信介であった。商工官僚として出発し、満州国へ渡って“二キ三スケ”の一人に数えられるほどの実力者となる。戦後は公職追放解除からわずか五年で首相へとのぼりつめた軌跡は、ある意味象徴的である。

 満州人脈が戦後の経済復興で大きな役割を果たしたのは偶然ではない。やはり、戦前期日本において最大のシンクタンクであった満鉄調査部の存在が大きい。“王道楽土”なる理念は、現在の我々からすれば眉唾ものだろう。しかし、そうした後世の我々からの評価は別として、少なくとも一定のヴィジョンを持った政策活動を展開する駆動力となっていたのは興味深い。

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