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2007年4月 8日 (日)

「檸檬のころ」

「檸檬のころ」

 多感な高校生の頃、ほのかに秘めた気持ちのゆらめきを描いた映画が私は意外と嫌いではない。あまっちょろいと言われるかもしれない。そもそも私自身、斜に構えてケチをつけようとする癖があるので、こうした作品を観ながら気恥ずかしいこそばゆさに体がムズムズすることもある。が、そのこそばゆさもひっくるめて快い。高校生活に思い残したわだかまりを心の奥底で引きずっているのか。あるいは、今では薄れてしまった純粋な心情を蘇らせたいという願望があるのか。

 ここで注意しておくが、高校青春もの全般が好きと言っているのではない。感覚的なものなので線引きが難しい。たとえば、アットランダムにだけれど、石川寛監督「好きだ、」(2006年)、安藤尋監督「blue」(2003年)、古厩智之監督「この窓は君のもの」(1995年)、本来はテレビ用アニメだがスタジオジブリ製作の「海がきこえる」(1993年)といったあたりを思い浮かべる。こう書きながら、いずれも東京ではなく地方を舞台にしていることに気づいた。今回観てきた「檸檬のころ」もまたそうである。

 栃木県のローカル線沿いにある高校が舞台。ブラスバンドで指揮をする秋元(榮倉奈々)は野球部の佐々木(柄本祐)と付き合い始めるが、同じく野球部で幼なじみの西(石田法嗣)の視線が気まずい。将来は音楽ライターになろうと夢を描いている白田(谷村美月)はクラスの誰とも関わりを持たず自分ひとりの世界に閉じこもっていたが、バンドをやっている辻本(林直次郎)とふとしたきっかけで話がはずみ、彼への想いに目覚める。こうした5人が大学受験をひかえた日々に感じた戸惑い。そこに、それぞれの立場でケリをつけて自分なりの方向を見出していく姿を描く。

 榮倉奈々は、そのスラリとした立ち姿に清潔感のある魅力があって、控えめな優等生らしい雰囲気をよく出していた。ただし、少々影が薄い。彼女の知名度は割合と高いからだろう、榮倉が主役扱いとなっているが、むしろ谷村美月の方が存在感が強かった。自分の世界を追求して突っ走るかと思うと急に落ち込んだり、そうした素っ頓狂な役柄が、かえってかわいらしく感じられた。谷村演ずる白田に、タイプは違うのだが高校時代の私自身の一側面を投影して感情移入しているのかもしれない。

【データ】
監督・脚本:岩田ユキ
原作:豊島ミホ(幻冬舎、2005年、私は未読)
2007年/ゼアリズエンタープライズ/115分
(2007年4月7日、渋谷、シネアミューズにて)

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