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2007年4月12日 (木)

山内昌之『歴史学の名著30』・佐々木毅『政治学の名著30』

 各分野における名著をリストアップした解説本は割合と多い。とりわけ、中公新書で出ていた『~の名著』シリーズは手引きとして参考になった。ふと気になったのでいま調べたところ、そもそも中公新書の第一弾が桑原武夫・編『日本の名著──近代の思想』(1962年)だった。大学に入るかまだかくらいの頃、古本屋の店頭ダンボール箱売り(神保町では今でも見かける)で百円でこれを買って読んだが、まだ読書経験の乏しい頭にとって費用対効果の効率が極めて良かったと得した気分になったことを覚えている。

 いずれにせよ、こうした『名著』ものは、取り上げられた一冊につきその筋の専門家一人の手で紹介するという分担執筆のスタイルを取るのが普通だろう。これに対して、一人の視点で書き下ろしているのがここに掲げた二冊の特徴である。学者だから当然と言ってしまえば当然なのだが、それにしてもこれだけジャンル横断的に該博な読書量には本当に恐れ入る(ここまで書きながら、一人で書いた『名著』ものとして浅羽通明『アナーキズム──名著でたどる日本思想』『ナショナリズム──名著でたどる日本思想』(いずれもちくま新書、2004年)があるのを思い出した。最近、幻冬舎新書で出た『右翼と左翼』(2006年)も含めて、読もうと思いつつ忘れていた…)。

 山内昌之『歴史学の名著30』(ちくま新書、2007年)で取り上げられているラインナップを見ると、たいてい名前くらいは知っている(ただし、伊達千広『大勢三転考』、劉知幾『史通』、アッティクタカー『アルファフリー』は本書で初めて知った)。しかし、知ってはいるが、きちんと読み通していない歴史書が多い。実は読もうと思って手元に確保してあるものも結構あるのだが、名著と言われる歴史書にはボリュームで圧倒されてしまうものが多くてなかなか読み進められないのだ(たとえば、ギボン『ローマ帝国衰亡史』やブローデル『地中海』を思い浮かべよ)。ところが、本書はそれぞれの読みどころを懇切に説いてくれるので、改めて面白そうだと気持ちがそそられた。さしあたって、原勝郎『日本中世史』『東山に於ける一紳縉の生活』やトロツキー『ロシア革命史』などはその魅力を本書で初めて気付かされたので、読んでみようと思っている。

 私はほとんど独学に近い形でだが政治思想史を一通りかじったことがある。そのため佐々木毅『政治学の名著30』(ちくま新書、2007年)で取り上げられているラインナップについては、実はそのほとんどに目を通したことはある(ただし、「Ⅳ 政治と宗教」で取り上げられているアウグスティヌス『神の国』、カルヴァン『キリスト教綱要』、ロック『寛容書簡』は未読)。しかし、あくまでも「目を通した」だけであって、本書を読みながら内容への理解が浅かったかなあと痛感させられることもしばしば。歴史書については「面白そうだから読んでみたい」というワクワクした気持ちがわいたが、政治学の古典については「おさらいしないとやばいなあ…」と切迫した義務感を抱えてしまった。

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