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2007年2月 4日 (日)

「悪夢探偵」

 刃物で自分の体をズダズダに切り裂く自殺者が相次いで発見された。キャリアとしての出世コースを捨てて現場を志願した霧島(hitomi)は若宮(安藤政信)と共に捜査を行なう。手がかりをつかめないでいたとき、自殺者が死ぬ直前に同じ番号に電話していたことに若宮が気付いた。どうやら、その番号にかけた後でうなされる悪夢に事件のカギが潜んでいるらしい。霧島は、異常な感受性を持ち他人の夢に入り込めるという陰気な青年・影沼(松田龍平)に協力を依頼したが…。

 私は塚本晋也の作品では、「鉄男」(1989年)、「東京フィスト」(1995年)、「バレット・バレエ」(1999年)といったあたりを観たことがある。それこそ生理的な意味での痛さがヒリヒリするようなやり場のない苛立ちをぶちまける感じが印象に強い。この「悪夢探偵」でも、サイコ・ホラーの形を取りながら、そうした焦燥感をあおり立てるムードが観る者の胸をかき乱す。とりわけ、映像の激しいブレとつんざくような金属音との組み合わせで、得体の知れぬ恐怖感を演出するあたりはさすがだと思う。ただし、ストーリーにはあまり感心していない。受け止め方は人それぞれだと思うが、「死にたい…」「いや、死ぬのは怖い」というセリフのやり取りはどうも興ざめしてしてしまう。

 安藤政信や大杉漣はそれぞれいい味を出している。何よりも松田龍平の不気味さはとりわけ目を引く。しかし、肝心のhitomiがよろしくない。足はきれいだが、表情もセリフも大根じゃないか。続編が決まっているらしいが、主役がこれではなあ…。

 私が観に行ったとき、最後のあたりで映像がピンボケしていた。てっきりそういう演出なのかと思っていたら、映写時のミスだったらしい。おわびとしてテアトル系列の無料招待券を一枚もらった。言われなければ気付かなかったのに、得した気分。

【データ】
監督・脚本・撮影・編集・出演:塚本晋也
出演:松田龍平、hiotmi、安藤政信、大杉漣、原田芳雄
企画・製作:海獣シアター
日本/2006年/106分

(2007年2月3日、シネセゾン渋谷にて)

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コメント

hitomiって女優業に進出したのか。知らなかった。

投稿: | 2007年2月 6日 (火) 20時24分

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