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2007年1月20日 (土)

「ハミングライフ」

(以下、内容に触れていますので注意)

 父親の反対を押し切って上京した藍(西山茉希)は就職活動中。服飾の仕事をしようと面接をいくつも受けているが、なかなかうまくいかない。仕方ないので通りがかりの雑貨店でアルバイトを始める。その日、公園で犬をみつけた。名づけてドドンパ。そばにある木のウロをのぞくと、小さな箱がある。中には誰かさんのメッセージ。犬のイラストがかわいかったので持ち帰り、代わりにお返事を入れた。こうして、物語づくりの好きな見知らぬ誰かさんとの文通が始まる。

 一つ一つの小さな営み。注意して目をこらしてみると、誰かの残した確かなしるしが街のあちこちに刻み込まれている。つまらないものと見過ごしてしまうかもしれない。しかし、そこに込められた人それぞれの想いを一つ一つ丁寧に拾い上げていくことは、逆に自分自身にとってかけがえのないものが一体何なのか、自らに問い直すきっかけとなる。

 雑貨店の理絵子さん(佐伯日菜子)が初めて仕入れたというカエルの置物。見知らぬ誰かさん(井上芳雄)のつづる物語。藍は他の人が抱く様々な想いに触れ始めたが、そんな時、せっかく仕事に慣れてきた雑貨店は店じまい。さらにドドンパがいなくなり、手紙を入れていた箱が消え、落ち込んだ藍は、自分の打ち込めるものは何なのか、もう一度考えなおすことになる。就職の面接では型通りの受け答えしかできなかった彼女だが、他の人にとってのかけがえのないものに共感し、何かを失うつらさを知ったいま、自分自身のものを着実につかみ取れそうだ。

 少女マンガっぽい雰囲気は好みが分かれると思うが、私は悪くないと思う。監督の窪田崇の作品を観るのはこれが初めてだけど、映像のつくり方がとてもうまい。とりわけ、街を描くときの光のあて加減がいい。登場人物の気持ちの揺れとそれに反応するかのような街並みそのものが持つ表情を浮かび上がらせ、通りすがりにはどうでもいいかもしれないが、そこで暮らす人の視線を感じさせる。藍が故郷の母親と電話で話している時の、部屋の中のぼんやりした薄暗さと窓の外に見える夕暮れ色に染まった街と空とのコントラストが私は好きだ。

 難点があるとすれば、主役の西山がこの映画のイメージと微妙にずれること。彼女の存在感は決して悪くないのだが、あまりにも美形なので、このしっとりとしたストーリーから浮き上がってしまう気がした。もう少し泥くさい方がいいと思うのだが、かと言ってたとえば池脇千鶴だと逆にはまり過ぎてつまらない。難しい。

【データ】
監督:窪田崇
原作:中村航
配給:フロンティアワークス
2006年/日本/65分/カラー/シネマスコープ
(2007年1月16日、テアトル新宿でのレイトショーにて)

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コメント

西山茉希は確かにかわいい。確か、キャンキャンのモデル
だったのではないか。映画に出ているとは知らなかった。

投稿: | 2007年1月21日 (日) 11時24分

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