台湾専門ブログ「ふぉるもさん・ぷろむなあど」を開設

 台湾の話題を専門に扱うブログ「ふぉるもさん・ぷろむなあど」を新たに開設しました(http://formosanpromenade.blog.jp/)。書評等を中心とする本館「ものろぎや・そりてえる」も継続いたしますが、更新頻度は遅くなるかもしれません。ご関心に応じてご笑覧いただけましたら幸いです。

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2016年5月15日 (日)

中川右介『戦争交響楽──音楽家たちの第二次世界大戦』

中川右介『戦争交響楽──音楽家たちの第二次世界大戦』(朝日新書、2016年)  1930~40年代にかけて世界中で戦争と粛清が荒れ狂った時代、こうした政治的狂気は音楽家たちをも翻弄していた。本書は1933年のヒトラー政権成立前後から1945年に第二次世界大戦が終わるまで、政治情勢をめぐる解説を節目ごとに挿入しながら、当時の音楽家たちの動向をクロノジカルに描写している。  名だたる作曲家や演奏家の名前はことごとく網羅され、著者自身があとがきで言うように、オールキャスト映画のおもむきすら持つ。焦点がしぼられていないからと言って、叙述が無味乾燥だったり散漫だったりということはなく、クラシック音楽ファ...

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2016年5月13日 (金)

豊川斎赫『丹下健三──戦後日本の構想者』

豊川斎赫『丹下健三──戦後日本の構想者』(岩波新書、2016年)  日本を代表する建築家の一人であり、都市計画の分野で大きな存在感を残した丹下健三。彼は都市や国土との有機的な結びつきの中で建築を捉えていたため、デザインを行う前提としてまず国土全体の課題を整理することが必要となる。従って、丹下の建築に関わる営為を考えることは、単に彼の建築デザインを論ずるというだけでなく、同時に彼が日本社会の現状をどのように理解し、将来的にどのような方向性へと構想していたかを問うことに直結する。他分野の専門家とも積極的に協力し、国土開発のコーディネーターとしての役割を果たし、さらには自らのプランを実行するには政治...

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2016年5月 9日 (月)

【映画】「灣生畫家 立石鐵臣」

「灣生畫家 立石鐵臣」   1941年7月、太平洋戦争の勃発が間近に迫った時期、台北で『民俗台湾』という雑誌が創刊された。1937年には日中戦争が始まって戦時体制が強まりつつあり、台湾では「皇民化運動」が展開されていた。「日本人」として皇国に心身ともに捧げることが当然視された時代状況下、台湾の民俗文化の記録・保存を目的とした雑誌の存在は、それだけでも当局から睨まれてもおかしくなかった。雑誌の刊行を継続することがまずは至上命題。検閲の目を逃れるためには時に国策に迎合する言辞もちりばめなければいけなかったが、いずれにせよ、日本人であるか台湾人であるかを問わず、台湾の文化や歴史に愛着を持つ人々が手探...

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2016年3月23日 (水)

【映画】「我們的那時此刻」

楊力州監督によるドキュメンタリー《我們的那時此刻》(私たちのあの時・この時)について、別ブログにて(→こちら)。大阪アジアン映画祭でも「あの頃、この時」というタイトルで上映された様子(→こちら)。

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2016年3月22日 (火)

【映画】「リップヴァンウィンクルの花嫁」

【映画】「リップヴァンウィンクルの花嫁」  岩井俊二監督の新作「リップヴァンウィンクルの花嫁」がなぜか台湾で先行上映されており(日本では3月26日より開映)、長年、岩井作品を見続けてきた者として観に行かないわけにはいかない。いま住んでいる台南では上映していないので、隣の高雄までわざわざ足を運んで観てきた。    派遣教員の仕事をクビになった七海(黒木華)は、SNSで出会った夫との新婚生活も破綻。両親も離婚寸前で、帰るところはない(実家は3・11大地震の被災地であったことがほのめかされる)。仕事も居場所も失って途方に暮れる彼女の前に、やはりSNSで知り合った安室(綾野剛)が現われ、不思...

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2016年3月20日 (日)

王明珂《華夏邊緣:歷史記憶與族群認同》

王明珂《華夏邊緣:歷史記憶與族群認同》允晨文化、1997年    約20年前に刊行された少々古い研究書ではあるが、大学院の授業で「これは必読書だよ」と言われ、慌てて図書館で借り出して通読した。著者の王明珂は中国辺境民族史を専門としており、中国でフィールドワークを行った成果も本書に反映されている。本書刊行時には台湾の中央研究院歴史語言研究所研究員、現在は院士。    「華夏」とはすなわち中国人アイデンティティーと言ったらいいだろうか。「民族」概念の可塑性を理論的前提として、つまり様々な条件がせめぎ合う中で「民族」なるものが指し示す内容も不断に変化していることを踏まえて、中国人...

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2016年2月 9日 (火)

【映画】「バーバリアンズ──セルビアの若きまなざし」

【映画】「バーバリアンズ──セルビアの若きまなざし」  セルビアの首都ベオグラード郊外の工場地帯で鬱屈した日々を送る若者たち。そうした一人のルカは学校には行かず、毎日不良仲間とつるんでいる。父は行方をくらませて一家は生活保護を受けている。恋人は地元サッカーチームのスター選手にとられ、仲間とつるんでも気が紛れない。2008年2月、ちょうどコソヴォがセルビアからの独立を宣言した頃で、テレビは連日、関連報道で騒ぎ立てている。  将来への希望が見いだせず、アモルファスな苛立ちを持て余して、刹那的な行動に身を委ねるしかない。そのはけ口は様々──サッカーを応援するフーリガン、ネット上でのガールハント、そし...

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對馬辰雄『ヒトラーに抵抗した人々──反ナチ市民の勇気とは何か』

對馬辰雄『ヒトラーに抵抗した人々──反ナチ市民の勇気とは何か』(中公新書、2015年)  国民的熱狂に沸き、監視の目が張り巡らされたナチズム体制下、命を賭して反ヒトラー運動に身を投じた人々がいた。例えば、映画「白バラの祈り」 で描かれた白バラ学生運動、トム・クルーズ主演の映画「ワルキューレ」 で焦点が当てられたシュタウフェンベルク大佐のヒトラー暗殺未遂(7月20日事件)などはよく知られているが、そればかりではない。地位や思想的背景も異なりながら、ナチズム体制によって遂行されつつある国家的犯罪に対して、良心に照らして疑念を抱き、自らの責任において行動した人々について、本書は有名無名を問わず取り上...

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2016年2月 8日 (月)

【映画】「不屈の男──アンブロークン」

【映画】「不屈の男──アンブロークン」  主人公のルイ・ザンペリーニは1936年のベルリン・オリンピックに陸上競技でアメリカ代表として出場した経験を持つ。第二次世界大戦が始まると爆撃手として出征したが、搭乗していた爆撃機が洋上に不時着、40日以上も漂流したあげく、拾い上げられたのは敵国日本の艦船だった。送られた先は大森俘虜収容所。彼が出場を熱望していた1940年の東京オリンピックは第二次世界大戦勃発のため中止となったが、捕虜として「念願の地」にたどり着いたことになる皮肉。収容所長の渡辺伍長に目を付けられたルイは連日、虐待を受ける。  アンジェリーナ・ジョリーが監督した第二作目。事前に「反日」映...

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2016年1月30日 (土)

待鳥聡史『代議制民主主義──「民意」と「政治家」を問い直す』

待鳥聡史『代議制民主主義──「民意」と「政治家」を問い直す』(中公新書、2015年)  代議制民主主義のあり方を本書は民主主義と自由主義の緊張関係として捉えている。民主主義は有権者の意思を政策決定に直接反映させることを求める。対して自由主義は、君主権力に対抗して財産権の擁護を図ったロック的自由主義にせよ、多数者の専制を抑制するため権力分立を制度化したマディソン的自由主義にせよ、多様な考え方や利害の代表者(エリート)の競争による相互抑制を重視している。もともと議会はこうした自由主義的な権力抑制に基づいて政策決定を行おうという発想から発展してきたが、有権者資格の拡大(=普通選挙)によって民主主義的...

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2016年1月29日 (金)

【映画】「サウルの息子」

 ナチスの絶滅収容所でユダヤ人のジェノサイドが行われていたとき、収容されたユダヤ人の中から選ばれて殺戮作業の手伝いをさせられていた人々をゾンダーコマンド(Sonderkommando)という。大量虐殺の一部始終を目撃していた彼らもやがて殺される運命にあったが、2,3カ月の延命と引き換えにこの作業に従事していた。  アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所でゾンダーコマンドとして働いていたサウルはガス室で遺体処理をしていたとき、まだ息のある少年を見かけた。親衛隊の医官はただちに彼の息の根を止めてしまったが、サウルは少年の遺体をユダヤ教の教義に則って埋葬してあげたいと考え始める。遺体を隠し、ラビを探...

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2016年1月27日 (水)

【映画】「クミコ、ザ・トレジャーハンター」

 日本へ一時帰国する飛行機に乗る前に少し時間があったので、「光點台北」というミニシアターに映画を観に行った。かつてアメリカ領事館だった建物を文化施設に仕立て上げた「台北之家」に附設された映画館で、いずれも侯孝賢プロデュースという形になっていたと思う。「サウルの息子」(索爾之子)と「クミコ、ザ・トレジャーハンター」(久美子的奇異旅程)の2本を上映中で、前者は日本で観るつもりだったので、後者を観た。  東京でOLとして働く久美子は鬱屈した毎日を過ごしている。唯一の楽しみは大好きな映画「ファーゴ」を観ること。とりわけ執心しているのは雪の中に現金を埋めるシーン。あの宝物を探しに行こう! そう決心した久...

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2015年8月22日 (土)

ドキュメンタリー「The MOULIN 日曜日式散歩者」

久しぶりのブログ更新。台南で少年時代を過ごした映画監督アン・リー(李安)も頻繁に通ったという全美戯院は、現在ではいわゆる二番館的な性格を持った映画館となっているのだが、時折、独立系映画の特別上映会がここで開かれる。2015年8月21日の午後、黃亞歷監督によるドキュメンタリー映画「The MOULIN 日曜日式散歩者」がここ全美戯院で上映されたので観に行った。1930年代、台湾随一の古都・台南で「風車詩社」を結成したモダニズムの詩人たちを軸に、日本統治時代における台湾における文学史的状況を描き出そうとしたドキュメンタリーである。以下はブログ「ふぉるもさん・ぷろむなあど」へ。

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2014年12月18日 (木)

多田井喜生『昭和の迷走──「第二満州国」に憑かれて』

多田井喜生『昭和の迷走──「第二満州国」に憑かれて』(筑摩選書、2014年)   戦争遂行に必要な条件は軍事、外交、財政。日本が中国大陸での侵略戦争を進めるにあたって財政面ではどのように資金調達を行っていたのか。本書によれば、朝鮮銀行の創案した「預け合」という錬金術的なからくりが活用されていたという。「“預け合”とは、日本円勘定で朝鮮銀行に振り込まれる華北の軍事費を、朝鮮銀行が現地に設立した中国連合準備銀行との預け合契約によって連銀券を調達して現地軍に支出し、手元に残る日本円は国債購入に回して国庫に還流させる仕組み」である(15頁)。   このからくりを使えば好きなだけお金を引き出すことができ...

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2014年12月17日 (水)

寺見元恵『フィリピンの独立と日本──リカルテ将軍とラウレル大統領』

寺見元恵『フィリピンの独立と日本──リカルテ将軍とラウレル大統領』(彩流社、2014年)   16世紀以来、スペインの圧政下にあったフィリピンでは19世紀にホセ=リサールが現れてから反植民地闘争が活発化、リカルト(1866~1945年)もその中で名を挙げた一人である。1898年の米西戦争にあたり、フィリピン独立というアメリカの約束を信じたアギナルドやリカルトといった革命家たちはアメリカ軍に協力したが、約束を反故にされると反米闘争に転じる。しかし、残酷なまでに徹底した掃討作戦で反米ゲリラ闘争は壊滅し、リカルトは日本へ亡命した。日本ではアジア主義者やラス・ビハリ・ボースなど他国の亡命者と交流を持つ...

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港千尋『革命のつくり方 台湾ひまわり運動──対抗運動の創造性』

  台湾を専門とする別館ブログ「ふぉるもさん・ぷろむなあど」の方で港千尋『革命のつくり方 台湾ひまわり運動──対抗運動の創造性』(インスクリプト、2014年)を取り上げました(→こちら)。著者の問題意識について私は好意的ではあります。ただし、本書では著者の問題意識ばかり先走ってしまって、必ずしも台湾の内在的事情を踏まえて書かれているわけではなく、そうした点は注意しながら読み必要があると思います。

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2014年12月14日 (日)

下斗米伸夫『プーチンはアジアをめざす──激変する国際政治』

下斗米伸夫『プーチンはアジアをめざす──激変する国際政治』(NHK出版新書、2014年)   一部メディアで「新冷戦」という表現も用いられる近年の国際政治の中でロシアはどのような外交政策を進めていくと考えられるのか。本書はウクライナ情勢、ロシア外交のロジック、そして外交政策を実質的に取り仕切るプーチン大統領個人の考え方を分析した上で、「脱欧入亜」という特徴を指摘する。なお、ロシアの「東方シフト」についてはドミートリー・トレーニン(河東哲夫・湯浅剛・小泉悠訳)『ロシア新戦略──ユーラシアの大変動を読み解く』(作品社、2012年)でも指摘されている(こちらを参照のこと)。   ロシアが「東方シフト...

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最近読んだ台湾の中文書3冊

  台湾で最近刊行された本を3冊、別館ブログ「ふぉるもさん・ぷろむなあど」にて紹介した。 ◆鍾明宏《一九四六──被遺忘的台籍青年》(沐風文化出版、2014年)   日本敗戦の1945年から中華人民共和国が成立する1949年に至るまでの激動期、海峡両岸をまたがって様々な人の動きがあった。本書で取り上げられるテーマは1946年に中国大陸へ渡った台湾人留学生。台湾海峡が分断されて帰れなくなった後、双方の政治的事情からタブーとなって、その存在が歴史の暗闇の中に消えてしまった人々も多い。著者は大陸でも調査を繰り返し、こうした悲劇的な人々の記憶を遅まきながらも掘り起こそうとした労作である。中には日本と密接...

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2014年10月14日 (火)

麻豆を歩く、台湾史が見えてくる

  台南市の北郊にある街・麻豆。もともとは台南平野一帯に広がっていた台湾先住民族(平埔族)であるシラヤ族の一支族、麻豆(Mattau)社の拠点でした。17世紀にオランダ人が進出してくると奇襲攻撃を仕掛けて多数を殺害するなどの抵抗を示しましたが(麻豆社事件)、やがてオランダの反撃を受け、勢力は衰えていきます。その後は漢化も進み、シラヤ族としてのアイデンティティーは薄れたかのように考えられていましたが、その習俗は意外に根強く残っていたともいわれます。   当時の交易港の跡が発掘されて、現在は麻豆古港公園となっています。麻豆古港公園の近くでは明治製糖株式会社の本社工場跡が総爺藝文園区として整備されて...

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2014年10月13日 (月)

将基面貴巳『言論抑圧──矢内原事件の構図』

将基面貴巳『言論抑圧──矢内原事件の構図』(中公新書、2014年)  日中戦争が勃発して日本国内でも世情が騒がしくなりつつあった1937年の12月1日、東京帝国大学教授・矢内原忠雄が辞表を提出した。彼が『中央公論』に掲載した論文「国家の理想」などの言論活動が反戦的で「国体」に反するという非難を受けて政治問題化したため、辞職へと追い込まれた、いわゆる矢内原事件である。滝川事件や美濃部達吉の天皇機関説事件、あるいは矢内原事件後の平賀粛学による河合栄治郎の休職処分、津田左右吉の早大教授辞職──時系列に沿って並べると、一連の言論抑圧事件の中のあくまでも一コマに過ぎないが、本書では敢えてその一コマを詳細...

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