台湾専門ブログ「ふぉるもさん・ぷろむなあど」を開設

 台湾の話題を専門に扱うブログ「ふぉるもさん・ぷろむなあど」を新たに開設しました(http://formosanpromenade.blog.jp/)。書評等を中心とする本館「ものろぎや・そりてえる」も継続いたしますが、更新頻度は遅くなるかもしれません。ご関心に応じてご笑覧いただけましたら幸いです。

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2020年5月28日 (木)

【七日間ブックカバー・チャレンジ:七日目】 中薗英助『夜よ シンバルをうち鳴らせ』

【七日間ブックカバー・チャレンジ:七日目】中薗英助『夜よ シンバルをうち鳴らせ』    十年前、初めて中国へ行った。当時は会社勤めをしていたが、五月の連休を利用した個人旅行で北京と天津を一人で歩き回った。歴史に関係する場所を巡るのが目的で、しっかり事前勉強もした。そうした中、知人から勧められて中薗英助の作品も読んだのだが、特に印象に残ったのが『夜よ シンバルをうち鳴らせ』であった。    日本軍の占領下、いわゆる「淪陥時期」において、現地採用の新聞記者となった主人公が目撃した北京の光景。中薗の作品のうち『北京飯店旧館にて』『北京の貝殻』などは回想録的、私小説的な形を取るのに対して、『夜よ ...

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2020年5月27日 (水)

【七日間ブックカバー・チャレンジ:六日目】 安彦良和『虹色のトロツキー』

【七日間ブックカバー・チャレンジ:六日目】安彦良和『虹色のトロツキー』    『虹色のトロツキー』は大学生の頃に読んで、はまった。主人公・ウムボルトは日本人とモンゴル人の混血で、旧「満洲国」の最高学府・建国大学に在籍していたという設定である。当時、ソ連から追われて海外亡命を余儀なくされていたトロツキーを建国大学教授に迎え入れようという構想は実際にあったらしいが、この作品では「トロツキー計画」をめぐる日本軍の謀略工作にウムボルトが翻弄される姿が描き出されている。1930年代の東アジアを舞台として、ウムボルトという一人の青年を縦糸としながら、民族的背景の異なる様々な人々が交錯していく。ウムボルト...

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2020年5月26日 (火)

【七日間ブックカバー・チャレンジ:五日目】 上山安敏『神話と科学──ヨーロッパ知識社会 世紀末~20世紀』

【七日間ブックカバー・チャレンジ:五日目】上山安敏『神話と科学──ヨーロッパ知識社会 世紀末~20世紀』    人物群像劇の形で、ある時代相を描くという作品が私は大好きで、例えば、スチュワート・ヒューズ『意識と社会 ヨーロッパ社会思想1890~1930』とか、ピーター・ゲイ『ワイマール文化』、あるいは山口昌男の著作などを思い浮かべているのだが、一番印象に残っているのはやはり上山安敏『神話と科学──ヨーロッパ知識社会 世紀末~20世紀』である。学術書なのに、読み物としてめっぽう面白かった。    著者は本来、西洋法制史を専門としているが、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのいわゆる「世紀末...

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2020年5月25日 (月)

【七日間ブックカバー・チャレンジ:四日目】 寺島珠雄『南天堂──松岡虎王麿の大正・昭和』

【七日間ブックカバー・チャレンジ:四日目】寺島珠雄『南天堂──松岡虎王麿の大正・昭和』    東京の本郷界隈、現在の文京区にかつて南天堂という書店があった。今でも南天堂書房というのがあるが、何らかの関係があるのだろう。大正から昭和初期にかけて、この南天堂の二階にはカフェがあり、本書はそこに集った詩人や文士、活動家に主義者たちの群像を描き出している。私は20代後半の頃、大正期の思想史に関心を持っており、関連する論文を書いたこともある。そうした中で、最初は資料調査の手がかり程度の気持ちで本書をめくり始めたのだが、なかなか面白くてそのまま読み込んでしまった。    著者自身が詩人で、本書には自ら...

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2020年5月24日 (日)

【七日間ブックカバー・チャレンジ:三日目】 井筒俊彦『ロシア的人間』

【七日間ブックカバー・チャレンジ:三日目】井筒俊彦『ロシア的人間』    井筒俊彦といえば、イスラム研究の大家として世間では知られている。だから、なぜ井筒がロシア文学を論じているのか不思議に思う人もいるかもしれない。しかしながら、井筒の視野は実に壮大であった。意識のゼロポイントを探る彼の存在論的探究は、ある場面ではギリシア神秘思想の形をとり、またある場面ではイスラム神秘思想の形をとり、またある場面では仏教哲学の形をとるなど、様々な相貌を見せる。井筒はイスラムの研究者なのではなく、彼が思惟構造の共時的把握を目指して探究を進める様々なフィールドの、あくまでも一つとしてイスラムが選ばれたに過ぎない...

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2020年5月23日 (土)

【七日間ブックカバー・チャレンジ:二日目】 橋川文三『昭和維新試論』

【七日間ブックカバー・チャレンジ:二日目】橋川文三『昭和維新試論』   渥美勝という名前を見て、ピンと来る人は少ないだろう。大正期の「思想家」と言ってもいいのかどうか。高学歴ながらもすべてをなげうって放浪生活、「桃太郎主義」を掲げ、「真の維新を断行して、地上に高天原を実現せよ」と辻説法していた、国粋主義的な風来坊──現代の価値観からすれば単に奇矯な人物である。他方で、その風貌にはアッシジのフランチェスコを思わせる穏やかな気品がただよっていたという。橋川の『昭和維新試論』では、例えば石川啄木、高山樗牛、柳田國男、上杉慎吉、平沼騏一郎、北一輝など様々な人物が取り上げられているが、そうした中でも私に...

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2020年5月22日 (金)

【七日間ブックカバー・チャレンジ:一日目】井上靖『敦煌』

 SNS上にて「七日間ブックカバー・チャレンジ」というタイトルの連続投稿を見かける。日本でコロナウィルスの蔓延により外出自粛となっている状況下、この機会に読書文化普及のため、一週間で一日一冊を紹介するという趣旨である。一冊紹介するごとに一人、もしくは七冊紹介した後に一人、誰かにバトンタッチすることになっているが、私もバトンを受け取ったので、やってみることにした。    本来はブックカバーをSNSにアップするだけでいいらしい。ただ、見ていると、皆さん色々とコメントを加えているようなので、私も規則違反かもしれにが、何がしかの思い入れも書き込んでおいた。思い入れがあると、やはり長々と書き込んでしま...

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2020年4月26日 (日)

【メモ】荒野泰典『近世日本と東アジア』

【メモ】荒野泰典『近世日本と東アジア』(東京大学出版会、1988年)   序 「鎖国」論から「海禁・華夷秩序」論へ・近世日本における「鎖国」→「海禁」と「華夷秩序」という二つの概念で理解可能であり、その意味で中国・朝鮮の海禁と共通しているという考え方から、従来のいわゆる「鎖国」論への批判。・「「海禁」は、国家領域内の住民(「国民」)の私的な海外渡航や海上貿易を禁止することを中心とした政策の体系である。明においては、当初倭寇や国内の不穏分子と国外の勢力の結びつきなどを防止するための政策だったが、やがて、明皇帝を頂点として形成された「華夷秩序」(冊封体制)と、それを日常的に確認する場である朝貢貿...

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速水融『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ 人類とウイルスの第一次世界戦争』

速水融『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ 人類とウイルスの第一次世界戦争』(藤原書店、2006年)    著者は周知のとおり歴史人口学の大御所であるが、『大正デモグラフィー──歴史人口学でみた狭間の時代』(速水融・小嶋美代子、文春新書、2004年)を執筆する中で、いわゆる「スペイン風邪」(本書では「スペイン・インフルエンザ」と表記)の重大さに気づいたという。当時のスペイン風邪については内務省衛生局が編纂した『流行性感冒』(『流行性感冒 「スペイン風邪」大流行の記録』[平凡社・東洋文庫、2008年]として復刻)もあるが、それだけでは不十分であり、そこで著者は当時の新聞記事を集める作業から着...

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2020年4月23日 (木)

岡本隆司(陳彦含・中国語訳)『朝鮮的困境 : 在日清之間追求獨立自主的歷史』(『世界のなかの日清韓関係史:交隣と属国、自主と独立』)

岡本隆司(陳彦含・訳)『朝鮮的困境 : 在日清之間追求獨立自主的歷史』(台北:八旗文化、2017年)(原書:『世界のなかの日清韓関係史:交隣と属国、自主と独立』講談社選書メチエ、2008年)    岡本隆司『世界のなかの日清韓関係史:交隣と属国、自主と独立』はだいぶ以前に読んでいたが(→参照)、こちら(台湾)の大学院の授業で本書の中国語版『朝鮮的困境 : 在日清之間追求獨立自主的歷史』が課題図書となったので再読した。ざっくり言うと、朝鮮・清朝・日本という三国を中心に17世紀から19世紀にかけての東アジアにおける外交秩序の変容を描き出している。    17~18世紀にかけての時期、朝鮮は清朝...

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2020年4月21日 (火)

岡田晴恵・田代眞人『感染症とたたかう──インフルエンザとSARS』

現在我々が慌てふためいている新型コロナウィルスへの対応をめぐって、基礎中の基礎とも言うべきポイントは、17年前に刊行された本書の中ですでに指摘されている。

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2020年4月19日 (日)

石光真人編著『ある明治人の記録──会津人柴五郎の遺書』

  石光真清『城下の人』を読んだついでに、石光真人編著『ある明治人の記録──会津人柴五郎の遺書』(中公新書、1971年)にも目を通した。編者の石光真人は石光真清の息子で、東京日日新聞(毎日新聞)記者。石光真人は父真清の関係で往来のあった柴五郎から紙面にしたためられた回想録を託され、それを校訂・整理した上で刊行されたもの。   熊本人の石光家と会津人の柴五郎との間にどのような関係があったかと言うと、石光真清の伯父にあたる野田豁通の家で柴五郎は書生をしていたことがある。戊辰戦争で敗れた会津藩士の一部は青森の斗南藩へ移されたが、柴が青森県庁に給仕として働いていたとき、知事として赴任してきた野田に...

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2019年12月24日 (火)

【映画】「夕霧花園」

 この映画は三つの時間軸から構成される。第一に、当時はイギリス領であったマレーシアを日本軍が占領した1941年から日本敗戦の1945年まで。語り手となる主人公・張雲林はマレーシア華僑で、妹の雲紅と共にミッションスクールに通っていた。ところが、日本軍によって収容所へ送られ、強制労働に駆り出されたばかりか、妹・雲紅は慰安婦として働かされる。日本の敗戦時、収容所にいた現地人捕虜は証拠隠滅のためすべて殺害されたが、雲林ただ一人逃げ出すことができた。彼女は妹を見殺しにしてしまった後悔を引きずっている。    第二に、戦後処理の行われている1951年。雲林は戦犯法廷のアシスタントとして働いている。当...

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2019年2月 6日 (水)

D・コーエン/戸谷由麻『東京裁判「神話」の解体──パル、レーリンク、ウェブ三判事の相克』

D・コーエン/戸谷由麻『東京裁判「神話」の解体──パル、レーリンク、ウェブ三判事の相克』(ちくま新書、2018年)    東京裁判をめぐっては玉石混淆を問わずおびただしい研究成果が生み出されてきた。現時点で代表的なものと言えば、歴史学としての粟屋憲太郎『東京裁判への道』(上下、講談社選書メチエ、2006年)、国際関係史の枠組みから論じられた日暮吉延『東京裁判』(講談社現代新書、2008年)といったあたりが挙げられるだろうか。ただ、いずれもタテ・ヨコの相違はあっても、広義の政治史の範疇に属する。これらに対して、本書は純粋に法理学の立場から東京裁判の判決書を分析しているところに特...

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2019年2月 4日 (月)

武田徹『日本ノンフィクション史──ルポルタージュからアカデミック・ジャーナリズムまで』

武田徹『日本ノンフィクション史──ルポルタージュからアカデミック・ジャーナリズムまで』(中公新書、2017年)    台湾に住み始めてから思ったのだが、台湾の書店では社会派ノンフィクション的な本が比較的少ない。あったとしても、大半は日本や欧米の作品の翻訳だったりする。そうしたことを台湾人の知人に話そうとしたとき、この「ノンフィクション」を中国語でどう言ったらいいのか、困惑してしまったことがある。ジャンルとしては「報導文學」というのがあり、これはルポルタージュの中国語訳だが、ただ、「文学」となっているので、社会科学的傾向の強いものは含まれないだろう。そもそも、日本語で言う「...

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2019年2月 2日 (土)

髙橋大輔『漂流の島──江戸時代の鳥島漂流民たちを追う』

髙橋大輔『漂流の島──江戸時代の鳥島漂流民たちを追う』(草思社、2016年)    太平洋の孤島、鳥島。江戸時代、記録で判明している限りでは、6グループの漂流民が鳥島でサバイバル生活をくぐり抜け、生還した。その中には1841年に漂着し、アメリカ捕鯨船に救助されたジョン万次郎も含まれている。生還できなかった人々はひょっとしたらもっと多数に上るのかもしれない。彼らの漂流譚はやはり好奇心がそそられるのだろう、例えば井伏鱒二『ジョン万次郎漂流記』、織田作之助『漂流』、吉村昭『漂流』などの作品でも描かれている。    著者はロビンソン・クルーソーのモデルとなったスコットランド...

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2019年2月 1日 (金)

松沢裕作『生きづらい明治社会──不安と競争の時代』

松沢裕作『生きづらい明治社会──不安と競争の時代』(岩波ジュニア新書、2018年)    ある時代の特徴というか、イメージの捉え方は、振り返ろうとしている現代の我々自身の問題意識の取り方によって大きく違ってくる。明治時代のイメージはどうであろうか。例えば、司馬遼太郎『坂の上の雲』の場合、明治のポジティブな健全さが強調されていた。それは昭和の軍国主義と対比する作者自身の執筆動機や、この作品が受け入れられた時代状況との関わりから解釈されるべきであろう。    本書では逆に、「生きづらい」というネガティブな時代状況に注目しながら明治社会の諸相が描き...

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桃崎有一郎『武士の起源を解きあかす──混血する古代、創発される中世』

桃崎有一郎『武士の起源を解きあかす──混血する古代、創発される中世』(ちくま新書、2018年)    「武士」の起源について、従来の学説ではきちんと説明されてこなかった、というのは驚いた。本書では「武士」の成立過程について、官職にあぶれて地方の所領に利権を求めた王臣子孫と、現地社会における有力古代氏族との融合という視点から説明を試みている。既存の見解に対する挑戦的な筆致が面白い。    ・新参者の王臣子孫が坂東の社会に溶け込んだ→「本来なら排除されるべきよそ者が、その既成の社会に受け入れられ、溶け込み、同化させてもらえたのは、彼らが持つ唯...

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2019年1月31日 (木)

【映画】「ナチス第三の男」

【映画】「ナチス第三の男」  ナチス親衛隊のナンバーツーであったラインハルト・ハイドリヒ(Reinhard Tristan Eugen Heydrich、1904-1942)。親衛隊やゲシュタポのトップであったヒムラーの右腕として辣腕を振るい、ヴァンゼー会議を主宰していわゆる「ユダヤ人問題の最終的解決」を策定したことでも知られる。この映画は1942年に起こったハイドリヒ暗殺事件を焦点として、前半ではハイドリヒが冷酷な手段でのし上がっていく様子が、後半ではチェコスロヴァキア亡命兵による暗殺成功までのプロセスとナチスによる凄惨な報復のあり様が描かれている。  ハイドリヒはもと...

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2019年1月29日 (火)

フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが…』

フィリップ・ロス(柴田元幸訳)『プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが…』(集英社、2014年)    1940年、もしもアメリカ大統領選挙でリンドバーグがフランクリン・ローズヴェルトを破って大統領に当選していたら──?    チャールズ・リンドバーグ(1902-1974)は大西洋単独無着陸横断飛行や北太平洋横断飛行を成功させた空の英雄として有名であり、その著書『翼よ!あれがパリの灯だ』は映画化もされた。他方で、彼がドイツへ渡ってゲーリングから勲章を授与され、第二次世界大戦中にはナチス・ドイツ支持の論陣を張っていたことも、現代史に関心のある人々には...

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