台湾専門ブログ「ふぉるもさん・ぷろむなあど」を開設

 台湾の話題を専門に扱うブログ「ふぉるもさん・ぷろむなあど」を新たに開設しました(http://formosanpromenade.blog.jp/)。書評等を中心とする本館「ものろぎや・そりてえる」も継続いたしますが、更新頻度は遅くなるかもしれません。ご関心に応じてご笑覧いただけましたら幸いです。

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2019年2月 6日 (水)

D・コーエン/戸谷由麻『東京裁判「神話」の解体──パル、レーリンク、ウェブ三判事の相克』

D・コーエン/戸谷由麻『東京裁判「神話」の解体──パル、レーリンク、ウェブ三判事の相克』(ちくま新書、2018年)    東京裁判をめぐっては玉石混淆を問わずおびただしい研究成果が生み出されてきた。現時点で代表的なものと言えば、歴史学としての粟屋憲太郎『東京裁判への道』(上下、講談社選書メチエ、2006年)、国際関係史の枠組みから論じられた日暮吉延『東京裁判』(講談社現代新書、2008年)といったあたりが挙げられるだろうか。ただ、いずれもタテ・ヨコの相違はあっても、広義の政治史の範疇に属する。これらに対して、本書は純粋に法理学の立場から東京裁判の判決書を分析しているところに特色がある...

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2019年2月 4日 (月)

武田徹『日本ノンフィクション史──ルポルタージュからアカデミック・ジャーナリズムまで』

武田徹『日本ノンフィクション史──ルポルタージュからアカデミック・ジャーナリズムまで』(中公新書、2017年)    台湾に住み始めてから思ったのだが、台湾の書店では社会派ノンフィクション的な本が比較的少ない。あったとしても、大半は日本や欧米の作品の翻訳だったりする。そうしたことを台湾人の知人に話そうとしたとき、この「ノンフィクション」を中国語でどう言ったらいいのか、困惑してしまったことがある。ジャンルとしては「報導文學」というのがあり、これはルポルタージュの中国語訳だが、ただ、「文学」となっているので、社会科学的傾向の強いものは含まれないだろう。そもそも、日本語で言う「ノンフィクシ...

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2019年2月 2日 (土)

髙橋大輔『漂流の島──江戸時代の鳥島漂流民たちを追う』

髙橋大輔『漂流の島──江戸時代の鳥島漂流民たちを追う』(草思社、2016年)    太平洋の孤島、鳥島。江戸時代、記録で判明している限りでは、6グループの漂流民が鳥島でサバイバル生活をくぐり抜け、生還した。その中には1841年に漂着し、アメリカ捕鯨船に救助されたジョン万次郎も含まれている。生還できなかった人々はひょっとしたらもっと多数に上るのかもしれない。彼らの漂流譚はやはり好奇心がそそられるのだろう、例えば井伏鱒二『ジョン万次郎漂流記』、織田作之助『漂流』、吉村昭『漂流』などの作品でも描かれている。    著者はロビンソン・クルーソーのモデルとなったスコットランド人アレク...

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2019年2月 1日 (金)

松沢裕作『生きづらい明治社会──不安と競争の時代』

松沢裕作『生きづらい明治社会──不安と競争の時代』(岩波ジュニア新書、2018年)    ある時代の特徴というか、イメージの捉え方は、振り返ろうとしている現代の我々自身の問題意識の取り方によって大きく違ってくる。明治時代のイメージはどうであろうか。例えば、司馬遼太郎『坂の上の雲』の場合、明治のポジティブな健全さが強調されていた。それは昭和の軍国主義と対比する作者自身の執筆動機や、この作品が受け入れられた時代状況との関わりから解釈されるべきであろう。    本書では逆に、「生きづらい」というネガティブな時代状況に注目しながら明治社会の諸相が描き出される。江戸から近代社会への急...

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桃崎有一郎『武士の起源を解きあかす──混血する古代、創発される中世』

桃崎有一郎『武士の起源を解きあかす──混血する古代、創発される中世』(ちくま新書、2018年)    「武士」の起源について、従来の学説ではきちんと説明されてこなかった、というのは驚いた。本書では「武士」の成立過程について、官職にあぶれて地方の所領に利権を求めた王臣子孫と、現地社会における有力古代氏族との融合という視点から説明を試みている。既存の見解に対する挑戦的な筆致が面白い。    ・新参者の王臣子孫が坂東の社会に溶け込んだ→「本来なら排除されるべきよそ者が、その既成の社会に受け入れられ、溶け込み、同化させてもらえたのは、彼らが持つ唯一の価値ある財産=貴姓を手土産にした...

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2019年1月31日 (木)

【映画】「ナチス第三の男」

【映画】「ナチス第三の男」  ナチス親衛隊のナンバーツーであったラインハルト・ハイドリヒ(Reinhard Tristan Eugen Heydrich、1904-1942)。親衛隊やゲシュタポのトップであったヒムラーの右腕として辣腕を振るい、ヴァンゼー会議を主宰していわゆる「ユダヤ人問題の最終的解決」を策定したことでも知られる。この映画は1942年に起こったハイドリヒ暗殺事件を焦点として、前半ではハイドリヒが冷酷な手段でのし上がっていく様子が、後半ではチェコスロヴァキア亡命兵による暗殺成功までのプロセスとナチスによる凄惨な報復のあり様が描かれている。  ハイドリヒはもともとエリート海軍士官で...

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2019年1月29日 (火)

フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが…』

フィリップ・ロス(柴田元幸訳)『プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが…』(集英社、2014年)    1940年、もしもアメリカ大統領選挙でリンドバーグがフランクリン・ローズヴェルトを破って大統領に当選していたら──?    チャールズ・リンドバーグ(1902-1974)は大西洋単独無着陸横断飛行や北太平洋横断飛行を成功させた空の英雄として有名であり、その著書『翼よ!あれがパリの灯だ』は映画化もされた。他方で、彼がドイツへ渡ってゲーリングから勲章を授与され、第二次世界大戦中にはナチス・ドイツ支持の論陣を張っていたことも、現代史に関心のある人々にはよく知られた事実...

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2019年1月25日 (金)

藤原辰史『給食の歴史』

藤原辰史『給食の歴史』(岩波新書、2018年)  給食は単なる食事ではない。学校は様々な出身背景の子供たちが一箇所に集まって一定期間、共同生活を営む空間である。例えば、弁当持参とした場合、貧困家庭の子供たちは弁当を用意できなかったりすることもあり、昼食の時間は均一の生活空間の中で、家庭背景に由来する相違が顕著に可視化される機会ともなり得る。そのため、給食は子供たちにもたらされかねない貧困のスティグマを回避するという原則が重要となる。また、教育を受けている期間は健康な身体を形作る上で重要な時期であり、給食は社会的インフラとして基本的な役割を果たしていると言えよう。  見方を換えれば、給食には様々...

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2018年5月28日 (月)

平川信『戦国日本と大航海時代──秀吉・家康・政宗の外交戦略』

平川信『戦国日本と大航海時代──秀吉・家康・政宗の外交戦略』(中公新書、2018年)   16世紀に渡来したポルトガル人やスペイン人を通して日本は初めて西洋文明と邂逅したが、他方で来日した宣教師の間で日本征服をめぐる議論が交わされていたこともすでに知られている。中には日本のキリシタン大名を動員して明を征服しようとする意見まで出ていたという。ポルトガルとスペインはトルデシリャス条約(1494年)によって世界二分割をすでに取り決めていたが、こうした世界情勢への対応として豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗たちの外交戦略を捉えようとするのが本書の趣旨である。   第一に、秀吉の朝鮮出兵は、ポルトガル・スペイ...

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2018年3月26日 (月)

橋本健二『新・日本の階級社会』

橋本健二『新・日本の階級社会』(講談社現代新書、2018年)    かつて日本社会の誇るべき特性として喧伝された「一億総中流」という言説が破綻してすでに久しい。社会格差の拡大が現実の問題として議論され始めたとき、私自身も相当なショックを受けた覚えがある。しかしながら、高度成長期にあっても実際には社会格差は厳然としてあり、ただそこに社会的関心が向けられていなかっただけである。「一億総中流」言説の原型は村上泰亮の「新中間階層」論に求められるが、そこで参照されていたデータは「階級帰属意識」の世論調査に基づいており、それはあくまでも「自分の生活程度をどう思うか」という個々人の意識を問うている...

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2018年3月25日 (日)

伊達聖伸『ライシテから読む現代フランス──政治と宗教のいま』

伊達聖伸『ライシテから読む現代フランス──政治と宗教のいま』(岩波新書、2018年)    フランスにおいて公教育の政教分離という考え方からムスリマのスカーフ着用の是非が大きな社会的・政治的論争となったことは日本でもよく知られているが、こうしたフランスのおける政教分離体制を「ライシテ」(laïcité)という。本書によると、次のように説明されている。   「宗教的に自律した政治権力が、宗教的中立性の立場から、国家と諸教会を分離する形で、信教の自由を保障する考え方、またはその制度のことである。法的な枠組みでもあるが、国民国家のイデオロギーとして、さまざまな価値観とも結びつく。...

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2018年2月23日 (金)

武井弘一『茶と琉球人』

武井弘一『茶と琉球人』(岩波新書、2018年)    本書ではまず、近世琉球は自立していたのか?という問いを立て、その答えを探るため琉球をめぐるモノの動き、とりわけ茶の流通に注目する。当時の琉球人が人吉の球磨茶を好み、その輸入に躍起になっていたというのは初めて知った。琉球の歴史を考える際、薩摩藩=支配者、琉球国=被支配者という政治的側面に目が奪われがちだが、もちろんそれは間違っていないにせよ、本書では球磨茶の消費者としての近世琉球に着目し、生活経済史のレベルから捉えようとする。当時の琉球は実は貿易赤字で、見方を換えると貿易に依存せずとも琉球人の暮らしは成り立っていた。つまり、近世琉球...

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末木文美士『思想としての近代仏教』

末木文美士『思想としての近代仏教』(中公選書、2017年)    本書はもともと別の媒体に発表されていた論考を集めた論文集の形をとるが、個別論点を通して日本近代思想史における仏教の位置づけを捉える視座を提供してくれる。序章に「伝統と近代」を置いて全体的な見通しを示し、「Ⅰ 浄土思想の近代」では清沢満之と倉田百三、「Ⅱ 日蓮思想の展開」では田中智学と創価学会の理論家だった松戸行雄を取り上げ、「Ⅲ 鈴木大拙と霊性」、「Ⅳ アカデミズム仏教研究の形成」では仏教研究の展開を論じ、「Ⅵ 大乗という問題圏」という流れで構成されている。    私が関心を持った論点は次の通り。序章ではいわ...

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2018年2月22日 (木)

大嶋えり子『ピエ・ノワール列伝──人物で知るフランス領北アフリカ引揚者たちの歴史』

大嶋えり子『ピエ・ノワール列伝──人物で知るフランス領北アフリカ引揚者たちの歴史』(パブリブ、2018年)    ピエ・ノワール(pied-noir)とは、直訳すれば「黒い足」という意味だが、北アフリカにいたヨーロッパ系住民を指す。アルジェリアがフランス植民地だった時期、彼らは自らを「アルジェリア人」と考えていたが、1962年にアルジェリアが独立すると、それはアルジェリア国籍保持者を意味するようになったため、「ピエ・ノワール」という呼称が定着していったという。ただし、本書「はじめに」で詳しく説明されているようにその意味合いは多義的で、本書では植民地アルジェリアのほか、フランス保護領だ...

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2018年2月21日 (水)

星野靖二『近代日本の宗教概念──宗教者の言葉と近代』

 以前から気になっていた星野靖二『近代日本の宗教概念──宗教者の言葉と近代』(有志舎、2012年)を、一時帰国の機会にようやく読むことができた。    「宗教」はreligionの訳語として、しばしば非歴史的な概念のように用いられるが、実際には近代日本の歴史的展開に合わせて「宗教」概念は組み上げられてきたという背景がある。とりわけ、明治になって伝来してプロテスタントが重要な契機となっており、また廃仏毀釈によって自らの存在証明を迫られた仏教がキリスト教に対する論争を通して理論的に磨き上げられてきた側面も看過し得ない。それぞれが自らの宗教伝統がより真正な「宗教」であることを弁証しようとし...

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2018年2月20日 (火)

【映画】「リバーズ・エッジ」

【映画】「リバーズ・エッジ」  岡崎京子の原作を読んだのはいつのことだったろうか。川べりの草むらの中にひっそりと横たわる死体。実存的虚無を抱え込んだ心象風景には、その死体は非日常の象徴のように捉えられる。そうした印象だけ記憶していて、こんなストーリーだったかなあ、と思い返しながらこの映画を観ていた。    過食症のモデル。セックスの身体的実感を通してようやく存在感をつかめる少女。セックスと暴力しかない、からっぽな男。同性愛であることを隠して、好きな相手(男)に気持ちを伝えられず、偽装的に女性と付き合う少年。彼らを、どこか冷めた視線で見つめている主人公。それは、映画の視点でありつつ、冷...

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チャイナ・ミエヴィル『オクトーバー──物語ロシア革命』

チャイナ・ミエヴィル(松本剛史訳)『オクトーバー──物語ロシア革命』(筑摩書房、2017年)    1917年のロシア革命は、実に様々な人物がそれぞれの政治的思惑をもってせめぎ合い、また合従連衡を繰り返し、群像劇としてこの上なく魅力的な舞台と役者を用意してくれた。本書はそれを見事に活用して面白い政治劇を活写している。  ニコライ二世の無気力、ケレンスキーの戸惑い、そして転変していく状況にのっかっていくレーニン。登場人物は彼らに限らず、次々と現れては消えていくし、二月革命から十月革命にいたる出来事を網羅的に拾い上げながらも、冗漫に流れることなく、一気呵成に読み終えた。分析的に整理するこ...

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2018年2月16日 (金)

筒井清忠『戦前日本のポピュリズム──日米戦争への道』

筒井清忠『戦前日本のポピュリズム──日米戦争への道』(中公新書、2018年)    近年、ポピュリズムという概念が注目を集めているが、これを大衆人気に左右される政治と解するなら、日本もかつて手痛い失敗を経験していたではないか。そうした問題意識から、本書は1905年の日比谷焼き討ち事件から1925年の普通選挙法成立をはさみ、1941年の対米開戦に至る歴史的経緯を通して戦前期日本の政党政治がポピュリズムによって崩壊していく過程を解き明かす。    日本におけるポピュリズム的政治の始まりは、「大衆」の登場とそれを動かす新聞の存在が重要な要素であり、日露戦争講和後の日比谷焼き討ち事...

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2018年2月15日 (木)

【映画】「花咲くころ」

【映画】「花咲くころ」  1992年、ジョージア(グルジア)の首都・トビリシ。中学校に通う二人の少女、ニカとナティアは無二の親友。大人へと背伸びしたい年ごろ。悪ガキどもからちょっかいを出されたりもするが、権威主義的な教師に退席を命じられると、彼らも含めクラスメートも一緒に外へ飛び出したり、意外と連帯感がある。    トビリシの歴史を感じさせる古びた石造りの街並み。坂の多い街で、年代もののロープウェイも現役だ。郊外に出れば、木々の豊かな緑と小川のせせらぎが、気分をホッとさせる。アパート群は旧ソ連時代のものか。これらを背景に少女たちが闊歩し、にわか雨に見舞われたら、土砂降りの中を駆けてい...

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松村介石について

 ちょっと必要があって松村介石(1859-1937)について調べている。とりあえず、松村介石『信仰五十年』(道会事務所、1926年/伝記叢書213、大空社、1996年)と加藤正夫『宗教改革者・松村介石の思想──東西思想の融合を図る』(近代文芸社、1996年)を参照した。後者は前者を祖述している感じの内容。    松村介石は1859年に明石藩士・松村如屏の次男として生まれた。幼少期から漢学に親しみ、父からは学問をするよう励まされていた。1875年、神戸に出て英学を修め、さらに1876年に上京。入学した玉藻学校が閉校したため、ヘボン塾に入る。彼は英学を学ぶのを目的としており、キリスト教を...

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